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配本開始まで 連載第4回


10.9.21.

○ 第二回配本 第八巻 心・道草 の原稿整理をする。
第三次全集 正誤表紙型により訂正。普及版原稿を一頁宛改
め、それに訂正してある誤植一箇 綴(誤)―― 綴(正) 発見。(増訂資
料帳参照)
普及版も各頁改めたが、普及版の誤植以外に訂正せる
もの見当らず。

○ 本田顯彰氏来店。長谷川さんを通じて
推薦文を依頼して頂く。
承諾。本日中に執筆の了を。
刊行の辞、校正控刷を一部お持ちになる。

○ 飯山さんの原拾ひを午前十時頃で中止して虞美人草
と坑夫の再校引合にかゝる。


◎ 朝七時についてすぐ小宮さん。
夕五時迄ギシギシつめる。小宮さんグロツキイ。
その記事は次の次の次の頁から

(注: むろんこの ◎ は仙台から帰っての長田の筆。)


10.9.21.   仙台に於いて、 No 1


仙台へ齎した要件 竝その解決 及残つた問題 (長田のサイン)
        順序出鱈目     及その対策、処置。

(長田は、小宮へ、実に①から㉙までの質問を突きつける。このあと、小宮の方からも、別に①と②の提案をする。)


① 講演は、
  Ⓐ 講演された月日を以て示すべきか。
        小宮: (示す)こと。さうしておいていゝだらう。
        (以下、小宮の答えは、直筆ではなく、長田による朱書き)
       
  Ⓑ それが掲載されたるものはその書かれた日附
    或は掲載日或は掲載号を示すべきか。
  Ⓒ  両方示すべきか。
        殊に本全集にⒷによつて収録された場合Ⓐだけではよくあるまい。
       
        小宮: Ⓑを調べた殊は書いておかなくても分るだろう。
       
        長田: 曰く やはり、巻によつて不統一があるし、講演の事を前に、掲載誌等の事をあとに統一整理したい。


② 普十四ノ四五二『長塚節氏の小説「土」』 
    これは雜篇ではなくて評論の部に入るべきならん。
    小宮: 然り。
    長田の添え書き: 台本原稿移しズミ


③ 扉の問題

    Ⓐ 坊ちやん他七篇はこれでよいか。
    小宮: よからん。他は外。
   
    Ⓑ 漱石全集 冊
    小宮: はそれでよし
   
    Ⓒ 漱石全集 別巻 總索引
    小宮: は、別冊と別巻とあつて紛らはしいし、これでは背に別巻と出る事になるからこれはやめて、背にすぐ 總索引 と出したい。從つて扉は左の如する。
    Ⓒ漱石全集 總索引 地名 人名 竝 作品
   
    右の③扉ⒶⒷⒸ 狩野先生に書いて頂くべく手配ズミ
   
   

10.9.21.   於仙台 No 2

④ 大谷繞石氏手紙の年代
    小宮: 大正二年
    長田: 右年次に編入、台本原稿貼り込みズミ
   封筒なしの書簡はその欄を如何致すべきや    


⑤ 余が文章に裨益せし書籍 中學世界でなくて文章世界の事
    小宮: 直してよし。すべて年代とか出所とか立証さるるものは直して可し。
    長田: 右 原稿台本直しズミ


⑥  『幻影の盾』(普十四巻「雜篇」)自序 明三八、二 ?
    本文は短篇の説集上、三十八年四月一日、四月號ホトヽギス。
    小宮: これは本文に備へられてあるべきもの。いゝ発見をしてくれた。薤露行にならつて、六号にて。
   
    長田: 右自序、原稿台本 転じズミ  但し 右自序 漾虚集になく 出所不詳 ホトトギス ?


⑦    年表について一應
      小宮: ベツケンスミ。


⑧    「坑夫」切抜帖。 拝借の事。
       小宮: なし
       長田: 記録に(大正十三年十一月二十二日拝借 一月二十八日返戻)
       小宮: そんな記録があるかね。誰かから借りてやつたのか分らない。とにかく    ない。大谷が沢山切りぬきをもつてゐた。遺族にきいて手に入れるとよい。
       長田但書: 切ぬきはカマクラさん スミ


10.9.21.   於仙台 No 3


⑨   別冊 方丈記 目次 方丈記英訳  
           仲扉  英訳方丈記
      小宮: ナホシテヨシ
      長田但書: 但しスデニ普及デハ直シテヰタ。
                  台本原稿訂正ズミ


⑩  「道草」 美土路氏借用不能?
      小宮: 考へて下さる事。(注:編集の現場の連載第10回でもこの美土路氏からの借用問題が起きている。)


⑪  俳句集の事。別に資料について検討の事。
      普及=第三次、全く相當。
   小宮: 一々について出所を調べ編入箇所を決定。
   Ⓐ 鶴本氏(注: 丑之介)の俳句研究所載
      小宮: 採用の事。全部採つて特色を示すこと。(長田 採用スミ)
      Ⓑ 思ひ出す事などの句。
      小宮: 全部拾つてのせる事。重出を示す   (長田: スミ)
      Ⓒ 俳句集にある句
      小宮: それぞれ分かる限り編入す。
      長田: 以上ⒶⒷⒸ 台本 原稿 にそれぞれ記入ズミ。


            ◎ 別に新資料帳へそれを抜き書きする事。
     ◎ 尚左の数句は そこで決せられず書き抜いて
                おいて上京。
       「注: 以下にあげられている7句省略」

  
10.9.21.   於仙台 No 4

          Ⓓ 等秋の句  これは入れない。句集にはあるが、
               思ひ出すこととは自ら別刷ならん。
          小宮: 入れない。然り。
                     


⑫  鎌倉氏の事、話して、
   小宮: 色々材料をかりてくれ。

   浪漫古典をお見せして、
     小宮: 浪漫古典とりよせて送つてくれ。

   大八州學會へのせた作文の事を書いた手紙。
      小宮: 高校時代の文章等に属するものはそ   
            の時は、課題作文だからと
            いふので純粋に創作に扱は
            ずやめた。が今度もう一度
            寺田さんに讀んで頂いて
            きめようとて、
           
            六篇返さる。コノ原稿がコノ六篇ノウチニアツタコトハオ忘レナノカオ話シガナカツタガ、ソノ旨記シタ レツテル様ノ票ガツイテヰタ。
           
           


⑬  虞美人草 校正
      小宮: 一々具体的に校正について解決し書き込んだ。


⑭  原 の問題、全体に亘つての調書を置いて参る。
      小宮: 配本順から許可して上げようとの事。


10.9.21.   於仙台 No 5

⑮  安倍氏、鶴本氏、鎌倉氏 の書簡
      小宮: 御覧になる。


⑯  阿倍さんの刊行の辞
      小宮:小宮をほめて困つたなア。刊行会の言葉だからなア。然し、会として個人の名前を並べるのではないから、いゝか。


⑰  森田さんの事
      小宮: 手紙が來てゐる。返事を書かんと。


注: ⑱⑲⑳  省略


10.9.21.   於仙台 No 6

㉑  推薦子人選
      小宮: (注: 思いつくままに16名をあげたようだが、実際の内容見本の推薦人に載ったのはこのうち6名。)

(注: 以下、残り、㉙までと小宮の提言の部分は省略する。)


10.9.22. (日)

仙台から着いて一と休みして
横浜の鎌倉さんへゆく。
大きい邸宅。沢山の材料に包
まれ乍ら同好の士とゆつくり
しらべてゆくのは愉快だつた。
雨もよかつた。流石に疲れた。
    旅行と夜行、蝦のやうになつて二晩。
        蟹のやうに坐つて丸二日。それで
        つかれたのです。
       
既に材料ハ番号まで打つてあつて、
出してあつたので、早速共同点儉。
出してあつた新資料のほかにも沢山
きりぬき等を拝借した。
拝借材料は南さん 整理別記したればこゝに録せず。
(注: 「借用品控」に記録されている)

借用材料の分類整理以前の先方の番号
による箇所は參考の爲保存資料に
とつておく。
それに書き込んだ覚えは進行すべきもの
にして記録すべきものに非ればここに採録せず。
及び俳句作製の年表に書き込んだ覚
えは それぞれ処置すべき事なれば
ここに採録せず。それぞれの結果をそれぞれ
の残すべき箇所にあとへ整理しておく。
ここには右の二点の事実のみ
を備忘しておく。

風呂敷を借りて大きい二包み。
五十点拝借。 一つ橋先生の室に置く。


○ 本田顯彰氏の推薦文 長谷川さんより頂く。

○ 小宮先生及び鎌倉氏より長田さんが借りて來て
下さつた資料を 借用品控えに記録。